背中合わせ




私は究極のひねくれ者だ。
どんなに長く付き合って、どんなに沢山のお互いの気持ちを囁きあっても。
私の心は誰にも理解されないのだと勝手に思い込んで、絶対に自分から助けを求めたりはしない。



こういった事は、相手には大変に不愉快な事であるらしく、私は何度も何度もそれを理由に大切な人を失った。
大切な人。
それは時に友であり、恋仲の相手であった。
友は私が自分の事を信用していないのだと結論付け、自分の事ばかり話す事に苛立ちを覚えた。
恋仲の相手もしかり。
しかし私は、どんなにその相手を思っていたとしても、何も言えなくなった。
例え、それがもう最後になって、本当は私がどんなに相手を思っていて、自分の深い心の海の中に沈んでいる事を話そうとしていたのだと。なんて。
本当は、とてもあなたの事を思っているのです。
など、まず無理だ。
言えやしない。



それは本当に小さな頃からの癖なのか、自衛の手段として成長する段階で身につけたのか。
自分でも、無意識下にそういった反応をしている事に気付く。
そしてそれに結局抗えず、結果落ち込むのだ。

なんて私はひねくれているのだ。
本当はもっと自分の思想や感情。環境を知って受け入れて欲しいと、とても強く思っているのに!!




「きっと、このままでは私を理解してくれる人なんて、一生現れないわ」
またそれがひねくれている。
なんてリボーンはイライラしていたけれど、私は本当にそう思っていた。




、会わせたい奴がいる」



ある日リボーンはそう帰るなり言う。
私はレモンティーを飲んでリラックスしていたが、直ぐに不機嫌になった。
リボーンは私がリボーンの知り合いに会うのを嫌がる事、どうやって話したらいいのか分からなくて。
それによって世渡り上手なリボーンとまったく違う私に、とても嫌な目を向ける事に気付いていなかったのだろうか。
少なくとも、数週間前のパーティでも、私はかなりその目を見て、しばらくの間は絶対知らない人なんて会いたくない。
そう思ったのだと言うのに。


「なんだ反抗的だな。大丈夫だ。・・・いいから、会ってみろ」
何が大丈夫だ。
残りのレモンティーを一気飲みして、私は自室に閉じこもろうとした。
しかしどうだろう。
リボーンは私の進行方向に静かに立つと、目にも留まらぬ速さで安全装置を外して照準を合わせていた。そしてドアの向こうに向かい。
「いいぞ」
もう来ている?
一瞬、リボーンの知り合いのあの嫌な目、そして今までの大切な人から吐かれた言葉を思い出して、ぞっとした。
静かにドアノブは回され、徐々にお客様が見えるようになるにつれ、私は息を飲んだ。
「初めまして、
お客様は眩しくて、私は心が急激に乱れるのを感じた。
ざわざわと耳鳴りがした。
いや、これは全身がまるで何かを話すように震える音だった。


。こいつはディーノだ」
リボーンは背をそっと押して私に小さな声で囁いた。



「あいつなら、お前の心の海も泳げるんじゃねーのか」



固まった私にディーノさんは優しく、穏やかに微笑んで手を差し出す。
自然と手が伸びて、そのまま男らしくごつごつした手が、それでも優しく私の手を包んでる。
リボーンは私の事を理解していた。
そうして私の心に入れる人を見つけてくれたのだ。
ディーノさんの目を見ると、どんな宝石にも負けないくらいの輝きがあって、何より安らかになれる。
大きな、長く深い溜息が出た。
それには私の、今までの沢山の良くない物が全て入っていて、それが私の体からす・・っと抜けるのを感じた。



「ディーノさん」
「おう!」
「あなたになら、私は凭れかかりたいと願ってしまいます。それは、負担ですか」
「いや、問題ないぜ。・・・こいよ」


大きく手を広げてくれて、はディーノにギュッっと抱きしめてもらおうと思いましたが。


「少しだけ、まだ恥ずかしいので、背中をかしていただけますか?」


そういうと、可笑しそうにディーノは笑って、背中を向けてくれましたとさ。




・おしまい・



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