帰り道



学校の帰り道。
冷たい風が吹いている。


さん寒くない?」

「だ、大丈夫です」


緊張して寒さなんて感じない。

だって、あの雲雀さんと一緒に帰ってるなんて…






ずっと前に、不良グループにからまれたことがあった。

「群れる奴らは嫌いなんだよね」

突然現れて、あっというまに助けてくれた雲雀さん。


それからずっとわたしの憧れ。


真っ暗だから一緒に帰ろうと
その人に靴箱で呼びとめられたのだから、本当に夢かと思った。






チラッと横を見る。


わたしのこと覚えててくれたんだ…

それだけでも嬉しいのに、いま雲雀さんが隣に…

すごくドキドキしてる。




「それ、なに?」


え?


雲雀さんの目線の先に、わたしのバックからはみでた編みかけのマフラー。


「あ、編み物とかはじめてて…下手なんですけど」


うわぁ…
うまくできたら雲雀さんにとか考えてたからかなり恥ずかしい。


「その色…男?」

「ええ、まぁ」


なんて言えばいいのか焦る。




「誰に?」


雲雀さんが急に歩くのを止めた。

なに?


「誰になの?」



ひ、雲雀さん?


わたしをジッと見る。

どうしてそんな目で見るんですか…?



なんでだろう、いま伝えないといけない気がする。



「こ、これ雲雀さんになんです」



ぎゅっと目をつむってうつむいた。
恥ずかしくて逃げ出したいのを必死に抑える。
こんなこと急に言って、ひかれちゃうかも…


お願い、なにか言ってください。




「…君、僕のこと好きなの?」


おちついた声だ。
やっぱりわたしなんかじゃ


「もしそうだったら、嬉しいんだけど」




へ?


パッと顔を上げると雲雀さんの顔が目の前にあった。


「違うの?」


白い息がかかるほどの近距離に、意識が吹っ飛びそうになる。


「ち、違くないです…」


かすれた声をしぼりだした。


「…僕がずっと見てたの、気がつかなかったみたいだね」


雲雀さんの声が胸に響く。




「僕も君が好きだよ」






一瞬の

ふれるだけの

やさしい口づけ





う、うそ…?

急な展開に頭がついていかない。
雲雀さんが少し驚いた顔をしたのはわかった。


「ワオ…真っ赤になってる」

「そ、そんな」

「可愛い」


隠そうとした手をとめられた。




はもう僕のものだからね」







雲雀さんがうすく笑みを浮かべる。

その顔にそのままとろけそうになった。
わたし、とんでもない人を好きになっちゃったのかも…



静かに雪が降りはじめた。

わたしの顔の火照りも、冷やしてくれるといい。











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