記念日
「十代目就任一周年を記念して…カンパーイ!!」
『カンパーイ!!』
わいわいと煩い酒の席を立ち、廊下へと歩を進めるこの宴の主役、沢田綱吉。
携帯電話を開いたり閉じたり。
何かを確認しているようだ。
「今日こそ…メールぐらいくれたって良いじゃん…」
苛立ち混じりの寂しそうな声で呟く。
「リボーン…」
呟くその名は、愛しい彼の名。
――それは十代目、就任の日。
「お前も漸く1人前か…」
「リボーンのおかげだね。」
「そうか…」
「…リボーン?」
「ツナ。今日で…お別れだ。俺はフリーに戻る。」
「は…?何、言ってんの…」
「…じゃあ、な。」
「待って…!!」――
フラッシュバックする過去。
綱吉は手の内の携帯電話を握りしめた。
「…十代目?」
気付けば、戸を開けて此方を覗き込む獄寺が居た。
「あ…ごめん。」
「リボーンさんですか?」
言い当てられたことに綱吉の目が伏せられる。
「う、ん。」
「…」
獄寺が暫く見つめていたがやがて口を開いた。
「飲みましょう!」
「え?」
「今日の主役は十代目なんですから…今日ぐらいリボーンさんを忘れたって、バチは当たりません!」
綱吉を気遣うように、獄寺はワザと明るく振る舞った。
「ね?」
「…うん、そうするよ。行こっか、獄寺君…」
そうして綱吉は獄寺に連れられ戸の中に消えていった。
ただ一度、何かを探すように後ろを振り返って。
〜明朝〜
額に触れる、誰かの手。
「(だ…れ…?)」
冷たいその手は、何故か綱吉には暖かく感じられた。
虚ろな瞳で上を見上げてみる。
黒い帽子、黒い髪。
黒い瞳に、黒い服。
肩に乗ったカメレオンと白い肌ばかり妙に目立つ。
「(カメレオン…?)」
綱吉はその存在に引っかかるモノを感じた。
虚ろだった瞳を開き、上半身を上げる。
周りの風景からして、酔いつぶれて店で寝てしまったのだろう。
頭が痛い。
二日酔いか。
「漸くお目覚めか?」
「え…」
聞こえてきた声は、綱吉の頭に張り付いて消えなかった声。
愛しい彼の、リボーンの声だった。
「リボーンっ…」
「何泣いてんだ。ったく、何年経っても泣き虫は変わんねーな。」
この嫌味な物言いも態度も、全てが変わっていなかった。
リボーンが綱吉を抱き締めて、耳元で微かに囁いた。
「もう…離れなくて良い。一年かかったがこれからはボンゴレ専属だ。」
綱吉の目が見開かれる。
「本当に?」
「ああ。だからもう泣くな。スーツが汚れる。」
リボーンが呆れたように溜め息をつく。
「っ…」
スーツが汚れると言われたにも関わらず、綱吉は力を
込めてリボーンを抱き締めた。
「ツナ。…愛してる。」
その言葉と同時に、綱吉の唇が掠め取られる。
「俺も…だよっ…」
聞き取れるか取れないか、そんな音量でしかしハッキリと、
綱吉は告白の答えを返した。
―――俺の就任記念日より何より、君が帰ってきた今日こそ、
人生で一番の記念日なんだ。
だから、二度と離れないで。
俺の一番、愛しい人よ。――――
あとがき
リボツナです。
...難しかった。
お題に戻る