距離




そろり、そろり。
あと50p。

自分の息でさえ起きてしまいそうで、息を一回するたびにドキドキする。

そろり、そろり。
あと30p。

「ツナ、それ以上近寄ったら殺すぞ。」

頭がガクッと垂れて、バタンと床に体が倒れる。



君との距離まで、あと30p。



「何で起きちゃうんだよ〜。もう少しだったのに。」

顔だけをリボーンの方へ向けて抗議した。

「誕生日に気分が悪くなるようなことするな。」

顔にかけていた帽子を被り直しながら、リボーンが言った。
そう、今日はリボーンの8歳の誕生日である。
偶数歳の為、平和に執り行われたバースデーパーティーの後、俺はソファーの上ですやすやの眠るリボーンを見かけたのだ。
しばらくはそれを1mぐらい離れたところから観察していたのだが、起きる気配の無いリボーンを見ているうちに今なら触れるんじゃないかという考えが浮かび、実行した。
まあ、失敗に終わったのだが。

「もう7年以上一緒にいるんだから、触ったっていいじゃないか。」
「触って欲しいなら、触ってやるぞ。」

そう言ってリボーンは俺のあごを持ち上げて、軽くキスをした。

「だー!!そうじゃなくて、俺から、お前に、触りたいんだよ!」

体を起こし、リボーンから少し距離をとって俺から、のところを強調して言うと、リボーンは口の端を少し吊り上げた。

「触ってるんだから同じだろ?」
「リボーンからしか触れないなんてずるいじゃないか!」

俺から触れないんじゃあ、抱きしめることもできやしない。

「別に俺が抱いてやってんだからいいじゃねえか。」
「よくない!」

そう言って俺は、リボーンに背を向けた。
時々、俺から離れて行きそうで恐くなる俺の気持ちなんか、コイツには分からないんだろう。
くだらない事ばっかりに読心術使いやがって。

「…ツナ。」

いつの間に俺のすぐ後ろに来ていたのか、背中から抱きしめられて、必要以上に甘い声で名前を呼ばれた。
そういう声は愛人だけに使えよ。

「くだらねえ事考えてんじゃねえよ。」
「……。」
「俺は、お前から離れない。」

力強い声でそう言われた。
8歳のくせに、そんな声を出せるなんて卑怯だ。
でも、今回は俺のほうが上手だったみたいだ。

「じゃあ、明日の俺の誕生日に『リボーンに触れる権利』くれよ。」

振り向いて、笑顔で言った。
リボーンの目は、驚きの所為か、少しいつもより開いている。

「なっ!お前…。」
「くれるよね?」

動揺するリボーンに俺は、顔を近づけて、満面の笑みで言う。

「くれるんだよね?」

今度は、お互いの鼻がつくかつかないかぐらいのところまで顔を近づけて言う。

「………分かった。」
「ホント!?」

長い沈黙の後、許可が下りた。

「ただし、明日はお前からキスしろよ。」
「え?」
「だから、権利をやるからお前からキスしろ。」
「え〜!!」

予想していなかった展開に、今度は俺が動揺した。

「じゃあ、俺は寝るからな。」
「え〜!ちょっと待ってよリボーン!!」

まだ動揺が抜けない俺は、リボーンに向かって叫んだ。

「何だ?一緒に寝て欲しいのか?」
「いや、違うし!」
「遠慮するな。」

そう言って、リボーンは俺をベッドの方向に引きずっていく。

「いや、だから違うって!」

その後、俺は無理やりベッドに連れて行かれ、次の日の朝に1時間以上かけてリボーンに初めて自分からキスをすることになった。



君との距離まで、あと0p。





あとがき

可愛い腹黒ですね、ツナさん。(自分の小説を読み返して思ったこと。←言うこと欠いてそれだけか!)
ツナは、リボーンに嘘をつく術を身に付けた模様です。
結局リボーンの方が上手ですが…。
「REBORN!」の王道はリボツナだと信じて止まない鋳でした。




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