殺意




この感情はなんだ。
熱く纏わりつき、僕から離れようとしない。
そう、まるで、これは――――――・・・


「殺意と、大差ない」






あの暗殺部隊とかいうのがいなくなってからあいつはよく現れる。
そのたびに、この感情が湧き上がる。
気持ち悪い、うざったいこれはいったいなんだ。
最初は殺意だと思っていた、でも。
何か違う・・・そんな気がする。
なにが違うのかはよく分からなかったけど。
(こんな感情、邪魔なだけだ)



「クフフフ・・・雲雀君、分からないんですか?」
「何、が」
「・・・気持ち悪い、うざったい感情?」
・・・人の心を勝手に読むな、って・・・何度言えば分かるんだろうか。
もうこいつが来てもあまり気にしなくなってしまった。
咬み殺したい、でもあの感情が動きを鈍くする。
だんだん自分が気持ち悪くなってくる。
他の人間は躊躇することなく咬み殺せるのに。
(僕が僕でなくなるような、気がする)
・・・でも。
僕はこいつを、咬み殺す。
六道、骸を。


「咬み殺す、よ」
「君には・・・出来ませんよ?」
「何言ってるの、簡単だよ」
クフフ、と笑うその顔に苛立つ。
絶対、絶対、
「咬み殺す・・・!」
トンファーを構えてじっと見据える。
「クフフ・・・無理だと、言ってるのに」
気づけば目の前に骸が立ち塞がる。
状況を把握しようと考えているうちに、眼前に迫る整った骸の顔。
「・・・君が気になっている、その感情を教えてあげましょう」
口端をあげた骸が、一層笑った。



柔らかい感触が、僕の唇に襲いかかる。



「それは・・・恋心ですよ」
骸の声が脳内に響き、ようやく我に返った。
顔が紅潮するのが分かり、トンファーを顎目掛けて振り上げるがもちろん当たるはずもなく。
「では、雲雀君・・・Arrivederci」
どこからともなく霧が満ち、視界がはれた頃にすでに骸はいなかった。





「恋・・・だって?」
まったく、ふざけないでよね。
そんなもの、認めるわけないよ。
なんで、この僕が、何であんな奴をなんでなんでなんで。

「冗、談、じゃない・・・!こんなの、」






(殺意と間違えるわけないのに、でも間違えて)
(僕は君がすき、なの?)








殺意、じゃなくて

(認めてたまるか でも、確かに心の奥底で)




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