苦手なもの
「ガハハー!ぶ・ど・うー!!」
「ホントにブドウ大好きだよな、お前」
夕食後のデザートに、近所のおばさんからもらったブドウが出て大喜びのランボに、ツナは苦笑した。
まるまると瑞々しいブドウ。ランボの目には宝石のように見えているのだろうか。
「ランボさんは飴玉も大好きだぞ!」
ばくばくと手を休める事無くブドウを貪りつつ、ランボが答える。
ブドウと飴玉の共通点。
(・・・丸いものが好きなのか?)
なんとなく導き出された答え。今度チョコレートでも与えて見よう。
「オレもブドウ好きだよ。おいしいよな」
房から一粒取り上げて、口の中に入れる。
甘い。
口の中に広がるほのかな酸味が、ブドウのおいしさを一層引き立てている。
「ツナはブドウが好きなのか?」
「うーん。ブドウがって言うか、ブドウも、だよね。オレ、果物は結構何でも好きだから」
甘く、瑞々しい果物たち。
野菜で嫌いなものは多いが、果物で嫌いなものはほとんどない。
「・・・あ、あった」
二個目のブドウを口に含む直前、ツナは呟いた。
大好きな果物の中で、唯一と言っていいくらい、わずかながらも苦手意識を持つもの。
「まずいのか?」
「いや、おいしいんだよ。まずいのは味じゃなくて形だな」
「??何だそれ」
「・・・・・・パイナップル」
「くしょん!」
「・・・大丈夫ですか?」
「ええ。あ、ありがとうございます」
くしゃみをした後ズズッと鼻をすすった骸に、千種がティッシュを差し出した。
「骸さん、風邪れすかー?そんな変な頭してるかられすよー」
ぴょこんと千種の肩から顔を出した犬が、「変な頭」と言って彼が命名した骸の「パイナッポー頭」を指差した。
「ちょっと犬、黙りなさい」
「ぎゃん!」
笑顔のまま骸に怒りの鉄槌を食らわされる。幾度となく繰り返された光景。
(いい加減学習すればいいのに)と千種は思うが、それを犬に諭してやることはしない。
だって、めんどくさいから。
「僕は風邪なんか引くようなやわな体はしてませんよ」
「なんたらって諺ありまふしね!」
「ちょっと犬、死んできなさい」
「ぎゃん!!」
(だから、いわなければいいのに)
自分で身を滅ぼすタイプだな、と判断する千種は、あくまで客観的である。
「僕はやわではないし、馬鹿でもない。と、すると・・・クフフ、分かりました!」
骸が素敵に笑顔を輝かせる。
こういうときは、概してろくなことを考えてはいないものである。
「ボンゴレが僕の噂をしていたんです!そうですね、きっと「骸って強くてかっこよくて憧れちゃう!」とでも言っていたのでしょう」
(・・・何故、名指し)
「間違ってもボンゴレがそんなことを言うはずはないだろう」とは思っても、表情には出さないところが犬と千種の世渡りの差だ。
しかし、骸の答えは当たらずしも遠からずである。若干、いや大部分が彼に都合のいいように改変されてはいるが。
「クフフ。そこまで言われては仕方がありません。いいでしょう。憧れの僕が!ボンゴレに会いに行って差し上げましょう」
なにがどうなってそうなるんだ。
(この人も、馬鹿かもしれない)
この冬、どんなに強力なインフルエンザも、彼らには関係なさそうである。
その夜、風呂から上がって部屋に入ったツナの目の前に恐怖のパイナップルお化けが現れた。
「噂をすれば影」
二度と、奴の話題は出すまいと心に誓ったツナであった。
終わり
パイナップルを見ると頭に浮かぶのは彼の姿。あまりCPっぽくないかもですね;
暴走ムク→ツナの片思い。ムクツナベースに黒曜メンバーを絡ませるのが大好きです!
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